となり町戦争 (集英社文庫)

となり町戦争 (集英社文庫)

静謐な不気味さが心地よい作品。
単行本が出たときから‘戦争’と‘となり町’というあり得ない組合せのタイトルに惹かれ続け、いつか読もうと企んではいたが長いこと手に取らずにいた。
そんな本をやっと読んだ。
夏の暑さゆえの気紛れか、運命の定めによる必然か。
そんなことはどうでもよく、読んだという事実だけが生き残るのだ。
長い間思い続けた末にやっと読めたという感覚、この感覚は、片思いをし続けた相手にやっと告白できたときの感覚に近い?かも…
またくだらない事をつらつらと書き連ね、自分の人格をめんどくさく貶めていく。
また意味の分からない言葉の羅列。
ことばが隊列を組んで行進していく様は爽快である。
その隊列を異国の首長のように高台から眺め行くのも粋であるか知らん。
そうだな、これは夢野久作の奇作『ドグラ・マグラ』を想起させる。
私の悪い癖は、他の作品・作家と比べてしまうこと。
他のはどうでもよくそのものだけを見つめていれば十分であろうに。
げに哀しや。


この作品には蛍光灯は似つかわしくなく、薄く明滅する街灯の袂がよく似合う。
ほのかに何かが漂う妖しさが惹きつける。


6畳間にはタイマー録音されたナイナイのオールナイトが流れていく。
そんな熱帯夜の瞬き。